#呟怖
丑三つ時、森の奥から響く金槌の音。

どうしても奴が許せなかった。
だからこれくらいなんて事無い…。
言い訳の呪詛と共に釘を打つ。
ふと金属音の間に、声が聞こえた気がした。
シン…とした空気が嫌に冷たい。
途端に臆病風に吹かれ来た道を引き返す。
背後からはまだ金槌の音がしていた…。 2021年6月18日 21:21

#呟怖
この街にも口裂け女の噂がある。
なんでも、夜中に独りで歩道橋を歩いていると、いつの間にか背後に気配を感じるそうだ。
そして、振り返ると見知らぬ女性が立っているのだとか。ただ、襲う事はなく。
何かを必死に伝えようとするらしい。
何故か縫い付けられたその口を裂く様に抉じ開けながら。 https://t.co/5sxFqKlpyJ 2021年6月17日 22:23

#呟怖
ひい…ふう…みい…袋に入った銀貨を数える。
13枚確かに有る。ふむ。支払いは守るようだな。

破られる扉の音、奴の家だ。
引きずり出される男と、それにすがる彼女。
バカな役人どもは私の話を信じたらしい。
魔族なんて居るわけがないと言うのに。

あぁ…泣いている君。これでずっと一緒だ。 https://t.co/oJeVi8vbUl 2021年6月17日 20:37

#呟怖
都内某所。人目を避けるかの様な裏通り、ひねくれた趣の陰鬱な路地に、ある探偵事務所がひっそりと建っていた。
ただ、そこへたどり着ける者は居ない。
正確には"生き者"はいない…だが。
立ち並ぶのはカゲ、かげ、影…。
忘れらぬ未練を見つける為にこの場へと来るのだ。
さぁ、ご依頼は？ https://t.co/lbFfUXrdHH 2021年6月16日 21:26

#呟怖
殺人鬼はとかく可笑しな習性を持ちがちだ。奪った命をまるでトロフィーの様に扱う。自慢気に見せつけたがる。だから私もそうするのさ。
あくまでも私からは遠いもので有る為に。
あの人に限って…そう思ってくれれば思惑通り。
おっと…拝啓、死に逝くそこのお嬢さん。
一緒に輪舞曲は如何かな？ https://t.co/NsnEJ0OvCZ 2021年6月15日 23:16

#呟怖
いつも手を差し伸べてくれたあなた。
いつも大丈夫だと励ましてくれたあなた。
死のうと決めた私を必死に止めてくれたあなた。
如何お過ごしでしょうか。
私はそんなあなたの優しさが大嫌いでした。
気分が良かったですか？人を見下すのは。
どんな気分ですか？私を置いて先に死んでしまうのは。 https://t.co/NsnEJ0OvCZ 2021年6月15日 23:09

#呟怖
父が言った。何時も恵みを下さる神々に直に礼を言わねばと。私も大いに賛成し、二人でどこまでも高くそびえる塔を作る事にした。
建て始めて暫くすると、金の林檎を咥えた鳩が一羽、父の元へと飛んできた。
その途端、父は狂った様に怒り、私を責め立てた。
まるで知らない言葉を発しながら。 https://t.co/sSvWatL0XR 2021年6月15日 22:59

#呟怖
拝啓　世界中の子供たちへ。
今年のサンタさんは生産が追い付いておりません。
大変な人手不足でございます。
そこで、お願いなのですが、クリスマスの夜は鍵を開けておいてください。
玄関の、窓の、ありとあらゆる鍵を開けておいてください。
そうしてくださると、とても入りやすいのです…。 https://t.co/sSvWatL0XR 2021年6月15日 22:48

#呟怖
その泉には、精霊が住んでいた。
どこかではミューズ、またどこかではナイアスとか呼ばれてる存在だ。
その歌は清らかで柔らかく。
その美貌は、何よりも美しかった。
ただ、それ故に他の美しい物が許せなかった。もし、川辺に美しい馬を見たのなら直ぐに逃げると良い。逃げ切れるかは別だがね。 https://t.co/kVu64gijcq 2021年6月14日 20:18

#呟怖
…なぜ何時も青空ばかり描くんです？
女生徒が尋ねる。
ん？あぁ私の大切な人が好きだったからね。
…それって私よりもですか？
バカな質問だ。
勿論だ妹だよ。虐めを苦に自殺したがね。確か、君は妹と仲が良かったな。嫌がる彼女の顔を覚えているか？
その青空には潰れた女の顔が描かれていた。 https://t.co/dh4ebyrffz 2021年6月14日 20:00

#呟怖
眠れない夜には、決まって母がお伽噺を聞かせてくれた。ある森の奥深くにある不思議な木の話。
その木はとても優しくて、何時も困ってる人を助けてた。生き場を無くした奴隷。困窮に喘ぐ場末の浮浪者。そんな全てを優しく吊るすの。
名前は確か…貧者の揺り篭。
あら？庭先の木と同じ名前だわ。 https://t.co/SX8yZ3vyq2 2021年6月13日 22:02

#呟怖
此処の所、おかしな事が続いていた。
最初は庭が荒らされるぐらいだった。
しかし、それは日毎に酷くなるばかり。
昨日なんて、家畜が全てやられてしまった。
ロバに犬に、鶏に、猫。全てだ。
翌朝、妻の悲鳴で目が覚めた。
掛け降りた一階のキッチンには息絶えた妻。
口に血の味が残っていた。 https://t.co/G51Re9paPt 2021年6月12日 21:59

#呟怖
もしもし…あたしメリー。
今、アナタの……あら？
私が行くまでもなさそうね。 2021年6月12日 15:16

#呟怖
離れて暮らしていた父から連絡があった。
家を引き払うから渡したい物があるのだとか。

見せられたのは、ひどく汚れた椅子だった。
それを見ながら父が言う。
「さぁ…母さんだ。」
え…?
「…これは母さんだ。肘掛けや足。張られた革。その全てが母さんなんだよ。」
母は病気で死んだって… https://t.co/CrPTqgGLeO 2021年6月11日 21:13

#呟怖
家には枯れ井戸があった

いつから枯れているのか家族に聞くと

掘った時からずっと枯れていると言った

なぜ？と聞く

押し黙る家族の中で祖母が答える

知らなくていいことさね
決して掘り返して
中を見ようとなんてしちゃいけないよ

聞いたことのない祖母の声色が
未だに耳に残っていた 2021年6月11日 19:29

#呟怖
怪異と奇譚の大禍時に
列なす憎悪の眼(まなこ)は誰ぞ

彼方でおのこの腕を食らい
此方でおなごの血をば飲み干す

あぁ悲しいかな悔いようと
今や霞の朧の月は
赤々　血濡れて我らの揺り篭

舞えや歌えや溢れた臓腑で
泣けや喚けや潰れた瞳で

ここが此岸の終着なれば
百鬼の夜行と共に逝かん https://t.co/LNHdHX9OlN 2021年6月9日 21:47

#呟怖
誰も近寄らない場所…
そんなモノがどこにだってあると思う。
ここはそんな場所のひとつ。
ドールハウス、なんて呼ばれている廃墟だ。
理由は簡単。人形が飾られているからさ。
それだけなら、まぁ気色悪いぐらいか。
おかしいのは、増えるのさ…
葬式なんかの度にね。
死んだ人そっくりなのが。 https://t.co/Km0l1yL8Jf 2021年6月9日 21:26

#呟怖
祖母は、もう長らく家族の顔ですらもわからない様な状態だ。
私の事は、見たこともない他人だと思っている。
昨日も、強盗だと言われて、危うく警察に通報されるところだった。
全く、甲斐甲斐しく世話をしてしていると言うのに…。

たまに正気になるから質が悪い。 2021年6月9日 21:17

#呟怖
今日は私が主演の作品が公開される日。
粗筋は、騙されて、裏切られて、悲恋に沈んだバカな女の話。
見て?相手役の憎たらしい顔。
私の泣き顔も中々でしょ?
そしてこのシーン…。
この崖。思い返すだけで身震いするわね。
あ…エンドロール。役名は私。
演者の名前は…やっぱり「空白」か…。 https://t.co/5mng1DKHER 2021年6月8日 14:37

#呟怖
「大きな目…」
『!?今…なんと?』
この画廊の主だろうか？驚きに目を丸くして私に問いかける。
「は、はい大きな目から涙が…」
『あぁ貴女にはちゃんと見えるのですね?あの過ちからはや幾千…やっと私は自由だ…』
それだけを言い残し、老人は灰になってしまった。今や瞳は私を見つめていた。 https://t.co/kfrs8KpMX9 2021年6月7日 14:04

#呟怖
心はどうも、深い水面の様だった。
誰かに見せる顔は、揺れる表面の薄い皮膜だ。
笑う。愛想を乗せて。強かに、悪辣に、悟られぬ様に。
相手が気を許すまで、ただじっと。
その隙間に入り込めたなら、後は此方のもの。
抉るのもいい、貪るのもいい。
私は真鍮の壺の中に残った唯独りなのだから。 https://t.co/7DObuzBhOG 2021年6月6日 20:59

#呟怖
昨今の技術の進歩は目覚ましい。
特に私が興味を惹かれるのは、写真や映像フィルムの修復に関する技術だった。
大好きだった祖母の古い写真を、何時か鮮明な物に修復したいと思っていたのだ。
踊る心で依頼した掠れた家族写真に目を通す。
其処には私の首を締め付け、父を睨む祖母が写っていた。 2021年6月6日 20:52

#呟怖
ある日の帰り道
ポツリとある街灯の下
そこに人影が見えた。女性…か？
此処からでも分かる程やたらと背が高い

嫌な気配にさっさと
横を通り抜けようとしたその時

スいマセん…　話しかけられた
はい　なんでしょう…?
どこそこを知らないかと聞かれた
私の住むアパートの私の部屋の番号を… https://t.co/MH2biCndkp 2021年6月6日 0:11

#呟怖
幼い内に両親を無くした私の身寄りは、祖父ただ一人だった。そんな祖父には何故か小指がなかった。
どうして？と聞くも、「そのうち解る」
と言ってはぐらかすばかりだ。
それから暫く経った七歳の誕生日。
祖父が鉈を片手に、私にこう言った。
「お返しする時が来た…小指を出せ」と。 https://t.co/EAZinSORJe 2021年6月5日 22:08

#呟怖　#贄怖
「立派な注連縄…」

『そうだろ？所で知ってるか？注連縄は彼岸と此岸との境を表してるって』

「じゃあ向こうは違う世界なの？」

『そうなるな。それと、締め縄とも言ってな。出したくない出しちゃいけないモノを縛る意味もあるんだ』

「……」

『どうした？こっちに来ないのか？』 https://t.co/bDbl5JYh8g 2021年6月3日 21:22

#呟怖
今日も刺身か！何か良い事でもあったのか？
何処か上機嫌な妻に問い掛ける。
んー？まぁ…ちょっとね
理由は解らないが、息子の事で神経質になっていた妻の機嫌が上調子なのは良い事だった。
所で、◯○はどうしてるんだ？まだ部屋から出て来ないのか？
妻は、もう心配いらないわ。とだけ答えた https://t.co/lIbWNH3Lg6 2021年6月2日 22:19